私がまだ中学生くらいだったころは、日本の企業がアメリカの不動産を買いあさり、バブル真っ只中だったと記憶している。1989年10月、交換留学で訪れたニューヨークのタイムズスクエアを見たとき、ちょうど三菱地所に買収されたばかりの頃で、帰国後にその事実をしってがっくりしたこともあった。いわゆる「ジャパンマネー」海外資産買いあさり真っ最中だった。
いま、ちょうどそれに近いようなことが、中国から世界に発信されようとしているように思う。まだ規模は小さいものの、徐々にそうした波が出てきているのではないだろうか。私の知り合いの会社も、中国人富裕層による日本の不動産仲介などをおこなっているが、日本の不動産物件は非常に人気があるという。
中国の不動産は、たとえばマンションや商業ビルなどでもそうだが、築10年でもヒビが入っていたり、ひどいところだと新築でも完全に壁がずれていたりと、とんでもない施工がおおい。中国の報道の言葉を借りると「30年もすれば、もうほとんど産業廃棄物と化してしまう」ようなお粗末な作りが多いのに、日本では築10年などは普通に新築のように綺麗で、築25年でも中国の築5年でも太刀打ち出来ないほどのクオリティを保っているという。固定資産税やら物件の修繕費などを考えても、資産価値が(めちゃくちゃ)減少しないという意味で、お買い得のようだ(個人的にはこの見解には非常に懐疑的だが)。欧米の物件の場合、目的が移民ビザの取得だったり投機であったりといった明確な不動産投資であるのに対して、日本の不動産は、どちらかというと半分貯金するような感覚で購入しているようだ。おまけに、現在日本の不動産は底値ということもあって、中国よりも安くなってきている。
中国の不動産は非常にたかい。先日所用で拝見させてもらった施工中のマンションなどは、北京空港に向かう途中にある望京というエリアにある物件なのだが、場所は東京を例にしてたとえてみると、交通の便が極めて良くない習志野の郊外といったかんじだろうか。近所に鉄道がない、繁華街はあるが車がないと基本生活できないような場所だ。そんなところで、270平米で1平米単価3万7000元。これを今の大体のレートで(1元約14円くらい)で日本円で換算してみると、1億4000万くらいになる。ちなみに、これは確かに高級マンションではあるのだが、内装費用がコミコミではあるのだが,家具などは一切はいっていない。さらに立地条件も極めて良くない物件である。立地条件がもっといい場所ならば、この限りではないことは明白だ。それでも、このマンションの80%はすでに完売しているという。あきらかに投機目的で購入している人が大半だという。つまり、マンションを買っても住まずに寝かせておくわけだ。そのため、中国での高級マンションなどは、夜でも結構真っ暗なままだ。誰も住まずに寝かせているマンションが多い。上の写真は、実際に施工中の物件写真だ。
中国の銀行でもプライベートバンキングなどのサービスを開始してきているが、なかなかそれらが浸透していない。というのも、日本や欧米、香港などのプライベートバンキングとちがって、サービスの種類が少ないのに加えて、銀行のサービス自体をあまり信用していない。中国人がよくいうのは「家は逃げない」というのだが、そういう実態のあるものを購入し、それを転がすことで財をなして行くというのが、中国人の価値観的に最も安心できる投機方法のようだ。
国民の過剰投資の状態を少しでも抑制しようと、先日中国政府は、現在では1家族が家を購入する場合、1軒目までは通常通り銀行のローンなども適用できるが、2軒目からはこれらの条件がかなり厳しくなるように決定し、即座に施行されたのだが、今度は偽装離婚してでも家を購入するというケースが後を絶たないと言う。また、こうした政府方針の決定もあって、より海外不動産を購入しようとしている富裕層が増加してきていると言う。
海外の不動産を購入しても、中国ほどに不動産は高騰しないであろうし、むしろ慣れない土地で思わぬ失敗をすることも考えられるが、どちらにしても、いまや中国マネーは一時のジャパンマネーの再来かのように、世界中で報道されているようだ。中国国外にいるとなかなかわからないかもしれないが、中国人ほど金にシビアな国民はそうそういないし、逆に中国人ほど金払いのいい国民もそうそういない。国内の商売だけしかしらない日本人が、はたしてどこまで中国人富裕層と太刀打ち出来るのか。北京に7年住んでいるが、私自身はまだまだ彼らに挑んで100%の確率で勝てる自信はさらさらない。。。
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